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『古代文化と琉球神話』

丸山 顯徳(※) 著

古代文学の研究に多くの示唆を与える高著である。書名では、「古代文学」と「琉球説話」を並列にしてあるが、本書の書かれた大きな目的は、日本の最も古層にある古代文学の研究にある。そしてその実践として、「日本人の古代性」、「古代的な秘儀」を追及している。研究素材の多くを沖縄の民間説話に求めているのは、著者によれば、「古代が沖縄に極めて色濃くみられるからである」。そのような視座のもと、「八重山のオヤケ赤峰伝説」、「伊江島の鬼の伝説」等など、沖縄の伝承の説話的本質を明らかにしている。その研究手腕は見事である。もちろん軸足としている古代文学研究においても、古事記や日本霊異記の研究等に、一石を投じる刺激的な発言が満ちている。

本書の構成は、第一編「古代文学と琉球説話」、第二編「沖縄の民間説話」、第三編「沖縄とその周辺」、第四編「古代賀茂氏の神話」、第五編「日本霊異記の説話」となっていて、内容的にも重厚である。

(三弥井書房/本体六五〇〇円)


※正しくは「徳」に一本棒が多い漢字です。
2007/1/22 掲載 : 田畑千秋