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第73回研究例会

第73回研究例会「シンポジウム:逃げる!―「恐怖」をめぐる口承文芸学」が、11月4日に高千穂大学で開催されます。

下記のように、日本口承文芸学会・第73回研究例会を開催いたします。ご多忙な時期ですが、万障お繰り合わせのうえ、ぜひご参加くださいますようお願いいたします。

 

日時: 2017年11月4日(土)14:00~17:00
場所: 高千穂大学セントラルスクエア2階 タカチホホール

 

内容:
 今回の例会では、久々に「話」を扱うことになりました。世界の口承話や現代の話でも時代を問わず面白さのあるのは逃走譚だと言えます。何から逃げるのか、どのように逃げるのか、その結果はどうなるのかを見渡すと、最終的には「恐怖」から逃げることを語っているのではないかと思われます。今回は、そこに視点を置きながら、日本・中国・世間話の三つの分野からパネリストのご発言をいただき、皆様と討論を尽くしたいと思っております。
 多くの会員のご出席をお願いいたします。

 初めに趣旨説明を司会者から述べ、パネリストには25分ずつご発言をいただきます。
 その後、10分ほど休憩をはさみ、参加者との討論を深めたいと思います。
 会員以外にも口承文芸や世間話に関心のある方のご参加も歓迎します。

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パネリスト
  関根綾子氏 「日本における逃竄譚の特徴」
  立石展大氏 「中国の昔話から 変婆の話を中心として」
  重信幸彦氏 「空からの恐怖:爆弾除けの話」
進行・司会
  中村とも子氏 


パネリスト発言要旨

「日本における逃竄譚の特徴」 関根綾子

 主人公が山姥や鬼から逃げる昔話(逃竄譚)は、全国で語られている。本発表では、日本における逃竄譚の特徴を考察する。
 逃竄譚の特徴としては、由来と結びつきやすいことが挙げられる。例えば、「食わず女房」(主に東日本)は、五月の節句に菖蒲と蓬を屋根にふく由来として語られる。そして、「天道さん金の鎖」の結末は、蕎麦の根が赤くなる由来が多い。このほかの逃竄譚でも、由来と結びつくことがある。
 また、柳田国男は「樹に昇つて危きを助かるといふのは逃竄説話の常の型」(「狼と鍛治屋の姥」『桃太郎の誕生』)と、主人公は木に登り助かると指摘するが、山姥と主人公が出逢う場面、逃げる時の援助者・物でも、共通点が多く見つかる。逃竄譚を場面に分けて比較し、特徴を考えたい。

「中国の昔話から 変婆の話を中心として」 立石展大

 変婆は中国南方の山中にいるといわれる、人を喰う妖怪である。日本の山姥とは、共通点もあり相違点もある。昔話の中では、「三枚のお札」のように逃竄譚の中で人を追いかける妖怪として描かれることもあれば、「天道さん金の鎖」の山姥や「狼と七匹の子やぎ」の狼のように変婆が母親に化けて、子どもを騙そうとすることもある。このように昔話の中で語られる一方、身近な存在としても恐れられている。そのため、変婆を見分ける方法が伝えられるなど、世間話のように語られることがある。とても現実的な恐怖の対象でもある。
 また、その存在の根本には、中国における「鬼」(死んだ者の魂)があるとも考えられており、伝承する人々の信仰とも関わってくる。
 このような変婆に、人々がどのように接し対処して、話を伝えているか。日本の山姥との比較もとおして、考察していく。

「空からの恐怖:爆弾除けの話」 重信幸彦

 ラッキョウを食せば、空から降ってくる爆弾に当たらない、そんな「うわさ」が、先のアジア太平洋戦争下の日本で流布していた事実が、当時の憲兵隊の調査資料のなかに記されている。それは、「空襲」という空からの恐怖に対する、私達の想像力の一つのあらわれであった。この想像力は、当時、どのようなリアリティを持ち得ていたのだろうか。恐怖を構築する知識や感覚、それから逃れようとする身振りが歴史的な産物であることを、戦時下の「うわさ」を素材に考えてみたい。

                                          

2017/10/12 掲載 : 例会委員会